二者択一しかないのか?
五月初旬、入院から1ヶ月が過ぎ、やっとリハビリができるようになった母。
起こしてもらい、車いすに乗せられ、それでも楽しそうにリハビリに向かう。
「ああ、もう大丈夫」と少し安心していた矢先、
「急性期も過ぎて病状も安定しましたから、転院してリハビリを続けるか施設に入るか、ご家族で検討してください」
と、まさかの二者択一。
リハビリは始まったけれど、ほぼほぼ動けない母の転院って……
第一、楽しそうにリハビリに向かう母になんて言おう……
「包括病棟は駄目なんですか?」
「行けますけど、リハビリが今ほどできませんよ」
「相談してきます……」
どんな病院が向いていて、リハビリ専門のデイサービスや施設がある事も、少し学んだ今ならば分かることも、知識の全くないこの頃は、ただただ戸惑うばかりだった。
「包括病棟に移してもらって、少なくなってもリハビリ続けてもらえばいいんじゃない?」
姪の言葉に背中を押され、包括病棟に移ってリハビリを続けたい旨を伝えると、
「あっ、そうですか。分かりました~」
と、笑顔で了承。
次の日、会社帰りに病院に行くと母の姿はない。……ない?いない!
慌ててナースステーションに行き「母はどこに行ったんでしょう?」の、何とも間抜けな質問に、
「あっ、今日、包括病棟に移ったんです」
(仕事早いな~)と思いつつ、
「お世話になりました」と、お礼を述べつつ母の元へ。
「遅かったね~。お疲れ様」
同室の人たちとも打ち解けた様子の母が迎えてくれた。
この日から、この包括病棟でリハビリをしながら退院を目指すことになった。